『限界にっぽん』(岩波書店)

 パナソニック、NEC、ソニー、朝日生命、ノエビア、コナミ、セイコー、クボタ、東芝、大京、日通、ベネッセ、リコー、日立製作所、佐世保重工…これは何の一覧かというと、『限界にっぽん』(岩波書店)に登場する会社でいわゆる「追い出し部屋」を設けて強引に社員を退職に追い込んだ実績のある会社だ。

 追い出し部屋という部屋はなく、人材開発…とか能力…とかもっともらしい名前がついた特別の部署で、ある日理由もわからないままその部署行きを命じられた社員は、「自発的に」退職・転職するまで陰湿ないじめ攻撃を受け続ける。元の職場にもどることはありえなく、ガス室送りとかアウシュビッツ行きとかよばれる。

 朝日新聞経済部の取材による本書で取り上げられた会社はおそらく氷山の一角なのだろう。いかに陰湿でも追い出し部屋というワンクッションがあるだけましという見方もあるかもしれない。それでも、誇りをもって20年以上も勤めてきた社員に「あなたの居場所はもうない」と宣告したり、パソコンも取り上げ名刺ももたせず、プライドの最後のひとかけらもこそぎ落として退職においやる手法は、さて特殊日本的なのだろうか。たぶんそうなのだろう。どれだけ追い詰められても裁判を起こすはずがない従順は羊だと見くびられ、事実大半の人がそうであれば、会社はやりたい放題であり、多くの羊は自分がそんな目に遭わないように息を凝らしてなりゆきをみているだけ、組合はもちろん会社の見方だ。

 終身雇用、年功序列賃金、企業別組合の3点セットが日本型経営の強みだとかいっていたのはつい30年前のことでhなかったか。ジャパンアズナンバーワンなどとうそぶいていた時代があったのだ。今や3点のうち始め2点は雲散霧消し、3番目は労働者の抑圧装置になりはててしまった。本書を読んでも明るい未来はかけらも見当たらない。これ以上黙っていれば骨の髄までしゃぶられる、それだけが確かなこととわかる。非正規雇用が40%という時代の趨勢はまだ止まる気配はない。この絶望的な近未来と、街を歩く若者の屈託のない幸福そうな顔の落差にめまいがしてくる。

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この記事へのコメント

2014年05月31日 21:12
最近は一方で労働力不足で、転勤や出産・育児での離職を防ぐ取り組みとか、良く紹介されるようになりました。陰湿な追い出し部屋と、同時進行しているのが、不思議といえば不思議なのですが。

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