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「学校では教えてくれない差別と排除の話」(安田浩一)

 ヘイトスピーチ(ネトウヨ、在特会)、技能実習生(という名の実質的奴隷制)、沖縄差別など、その気になればすぐに日本社会に蔓延する病理でありながら、視線をそらしていれば何もなかったかのようにみえる日本社会の差別問題を扱った本である。皓星社というマイナーな書店から昨年発行された本なので目にする機会が少なかろうと思うので、取り上げることにした…
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山本雄二「ブルマーの謎」

 「ブルマーの謎」という書名から何やらいかがわしいきわものめいた内容を想像するかもしれないけれど、しごく真面目な本だ。著者の山本雄二という人については何も知らない。  ブルマーの何が謎なのか。60歳以上の人なら、1960年代まで女子の体育着といえばカボチャ型のブルマーが一般的だったのに、いつのまにか体型を浮き彫りにするぴったり型に…
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開沼博「はじめての福島学」

 福島出身の若手社会学者による福島の現状を「啓蒙」する本といえばいいのだろうか。「放射脳」(開沼はこの後を使ってはいない)になってしまった人は捨て置いて、柔軟な頭脳をもつ普通の人に福島はそんなにとんでもないことにはなっていないと、あれやこれやのデータを示して理解をえようとするのが本書の目的だ。  その意図についてはそれなりに成功し…
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川喜田敦子『ドイツの歴史教育』

 新聞の書評で紹介されていた『ドイツの歴史教育』(川喜田敦子 白水社 2014年)を読んだ。ドイツは戦争責任に関して反省と謝罪を行ってヨーロッパの中に確固たる地位を築いてきたのに対して、日本は過去を直視することを避けたまま戦後を歩み続けたという。ではドイツではどのような歩みをたどったのか、それは単純に優等生的だとのみ評価できるのだろうか…
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島田裕巳『0葬』

 何となくそうじゃないかと思っていたことを腑に落ちるようにしてくれる本がある。島田裕巳『0葬』(集英社2014)はそういう本だ。それなりに馬齢を重ねてきて葬儀に関わる経験を何度かしてみると、葬儀とお墓という巨額の不経済(強いられた蕩尽)に腹ふくるる思いをしたことが誰でもあるはずだ。  島田によれば、ここ20年または30年の間に葬儀…
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自己啓発本の氾濫

 自己啓発本とは何かといえば、「ありのままにー」前向きに生きることを啓発してくれる本ということになるのかな。まあ新興宗教と紙一重といってもいい気もする。一昔前なら池田大作、谷口雅春、今なら大川隆法なんて人がいる。熱狂的な信者ならいざ知らず、ちょっこ心惹かれるくらいだとカバーもしないでこうした方々の本を読むのは気恥ずかしいものだったんじゃ…
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映画『NO』と『経済ジェノサイド』(中山智香子)

 最近、中山智香子『経済ジェノサイド』(平凡社新書)を読んだ。いまだに厚かましくも猛威を振るっている経済学の新自由主義の教祖M・フリードマンをガルブレイスと対比させながら、経済学の仮面をかぶったイデオロギーであったとして批判的に追究した本である。なるほどと思うことが少なくなかった。フリードマンの新自由主義は1960年代後半には生まれてい…
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原武史『知の訓練』

 私の好きな学者という言い方は変だけれど、日本政治思想史の原武史の著作が出るたびにわくわくする。近代の天皇家から鉄道、団地…と守備範囲の広さと視点の新しさが何と言っても魅力だろう。  近著『知の訓練』(新潮新書)は勤務先の明治学院大での講義録がもとになっていて、その空気がときおり伝わってくる。(ヨドバシカメラの歌を歌ったり、苦労が絶え…
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『絶望の裁判所』瀬木比呂志

 外国はいざしらず、各種の裁判に関心をもつ人の多くにとって、日本の裁判所は政治家ほどではないにしても信頼度はけっして高くはない。時々まともな判決がでるにしても、行政・米軍・大企業などを相手取った裁判では訴えた側が負けることが圧倒的に多いからだ。要するに裁判所は基本的に強い者、既得権を持つ者の味方だと思っている。  たぶんそれは間違…
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『九月、東京の路上で』『奥さまは愛国』

 口汚く韓国人・中国人を罵るヘイトデモのみならず、週刊誌の排外主義記事のオンパレード、それに乗せられての「何となく中国、韓国は嫌い」といったムードの蔓延、たった数年でここまで変わるのかと驚くにしてもこれは紛れもない事実だ。  節操のない本屋で平積みなっているのは嫌韓・反中本が多いとはいえ、こうした流れに抗う良書がないわけではない。…
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『限界にっぽん』(岩波書店)

 パナソニック、NEC、ソニー、朝日生命、ノエビア、コナミ、セイコー、クボタ、東芝、大京、日通、ベネッセ、リコー、日立製作所、佐世保重工…これは何の一覧かというと、『限界にっぽん』(岩波書店)に登場する会社でいわゆる「追い出し部屋」を設けて強引に社員を退職に追い込んだ実績のある会社だ。  追い出し部屋という部屋はなく、人材開発…と…
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宇田智子『那覇の市場で古本屋』

 沖縄は地方出版が盛んなところだ。長野県や北海道をはるかにしのぐんじゃないだろうか。宇田智子『那覇の市場で古本屋』(ボーダーインク 2013年)もその成果の一つだ。著者は30代前半の女性で、沖縄とは縁もゆかりもない育ちだったのに、ジュンク堂の沖縄店開設要員を志願して沖縄に渡り、2年ほどして退職そして那覇の牧志公設市場前で間口1間にもなら…
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新藤宗幸『教育委員会』

 岩波新書の近刊『教育委員会』(新藤宗幸)を読んだ。行政学の専門家が教育委員会を論じるという特色があらわれているかどうか、そこに関心があった。結論から言えば、啓発される点が少なくなかった。  今現在、教育委員会の独立性を弱め、教育長を首長の任命制にしようとする動きが現実化しつつある。教育委員会という独立の行政委員会によってかろうじて保…
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痛快な本、『昔はよかったと言うけれど』大倉幸宏

 「近年、凶悪犯罪が増えた」「近頃の若者はモラルやマナーに欠ける(規範意識に欠ける)」、よく耳にする言葉だ。常々疑わしいと思っていた。凶悪犯罪の増加は、統計的に戦後の一時期の方がはるかに多かったと証明できるのだが、規範意識の欠如となるとそれを否定する根拠は簡単にはあげられない。  『昔はよかったと言うけれど』(大倉幸宏、新評論刊)は、…
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「かつお節と日本人」

 宮内泰介・藤林泰共著の『かつお節と日本人』(岩波新書)を読んだ。ものの文化史というジャンルがつくづく私は好きなんだと実感した。いや面白かった。アジアにおけるものの文化史・生活史の草分けは鶴見良行だったが、その鶴見スクールの系譜に連なる著作が『バナナと日本人』『エビと日本人』そして本作『かつお節と日本人』ということになる。  昆布、煮…
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堤未果「(株)貧困大国アメリカ」にみる日本の近未来

 堤未果の「貧困大国アメリカ」3部作の第3作が出た。タイトルどおりに、1%の側の(株)多国籍企業が99%のアメリカ国民をさらなる窮乏に追いやりつつ肥え太っているという、おぞましい現実が克明に描かれる。  ウォルマートなどの巨大食品企業が貧困者を食い物にして巨大化していたり、モンサントによるGM種子・農薬・肥料のおしつけによって農民が貧…
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「山靴の画文ヤ 辻まことのこと」駒村吉重

 昔から少し気になっていて無縁のままで通り過ぎてきた人物に辻まことがいる。アナキスト辻潤と伊藤野枝の間に生まれた子というだけで関心をもつのに十分だろう。晩年はイラストとエッセイである種の世界では有名人であり、現在は熱烈なファンがいるのだという。  本書は、父親辻潤を縦軸、漂流し続ける人生のあちらこちらで出会った人々を横軸にして、辻まこ…
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森まゆみ「『青鞜』の冒険」

 森まゆみの本はけっこう読んでいる方だ。彼女が得意とする地域研究、伝記、女性史に関心があるせいでもあるし、対象への接近方法に共感がもてる場合が多いせいもある。申し訳ないのですが当方お金がなくてもっぱら図書館で借りて読んでます。すみません、たまには買うこともあるんです。  近著「『青鞜』の冒険」(平凡社)は最後まで面白く読めた。森まゆみ…
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『タイムっち』(なぜ天皇が神サマになったのか)

本書は岡田明作・みなみななみ画のマンガで読む日本キリスト教史である。もっと具体的には、近代日本で天皇が神格化され国民の上に君臨するようになる流れの中で、日本のキリスト教教会はどのように振る舞ったのか、キリスト教団では曖昧にされてきた歴史にクリスチャンである作者と画家が正面から向き合おうとした本である。戦前のキリスト教会が歩んだ道は無…
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本を捨てる日々

 4月からひまになるのを待って、本の整理に本格的に手をつけた。数年前にも一度手当たり次第に捨てたことがあった。地域の図書館にもっていけば、蔵書としてもらえる、古本市に提供する、どうぞ自由にもってって、の3種類に分けて持ち込めるとは知らなかったから、相当な数を紙ゴミとして処分した。今回はゴミになるわけではないから意欲的に処理をしている。 …
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原武史『団地の空間政治学』

 原武史は気鋭の日本政治思想史研究者であると同時に、筋金入りの鉄ちゃんであるのはよく知られている。これに加えて原のもう一つの側面が団地をフィールドにした戦後社会史・政治思想にすぐれた着眼点があることだ。『滝山コミューン』、『レッドアローとスターハウス』そして本書がこの系譜に属する。  大阪の香里団地、多摩平団地・ひばりヶ丘団地、常盤平…
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エミール・ゾラ『居酒屋』

 名作というのは往々にして「実は読んだことがない」人が多いからいつまでも名作の看板を掲げていられるといえる。ゾラの『居酒屋』『ナナ』を読んだことがある人は少なく、自然主義の傑作として名を知っている人は多い。かくいう私もそうだった。過去形でいえるのは『居酒屋』を読んだからだ。その名を知ってから40年経っていた。  さて、面白いかといえば…
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加賀乙彦『雲の都』全5部

 ようやく読み終わった。加賀乙彦の「自伝的?」大河小説の『雲の都』全5巻。主人公小暮悠太の成長小説で、戦前は『永遠の都』全5巻としてずいぶん前に完結していて、『雲の都』は戦後編という位置づけになる。『永遠の都』はなかなか重厚な長編でお勧めの作品というのに躊躇はない。『雲の都』はというと…。正直に言って言ってしまうと、メーデー事件あたりま…
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田中伸尚「良心と義務」(岩波新書)

 橋下が世間に馬鹿受けし、二番煎じで福岡では市役所職員に飲酒禁止令を出した。これも公務員バッシングの追い風で世間の支持をえちゃいそう。この人たちの言い分は、「いやなら公務員やめて民間に行け」その一方で「そんなのは民間では通じない、公務員の甘えだ」、民間と公務員はどちらがきびしい風にさらされるのか、支離滅裂。  橋下の日の丸・君が代強制…
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本を処分する

 最近は本をほとんど買わない。都内の図書館と横浜市の図書館で借りることにして、急で間に合わないときだけ買うことにしている。とはいえ過去40年間に溜まった本はかなりの量になっていて、私が死んだら処置に困るのは確実だ。そこでここ1年以上の間、本をぽつぽつ処分している。まともな古本屋に頼むのは面倒、ブックオフで一山いくらで引き取って貰うのも腹…
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「近現代日本史と歴史学」(成田龍一)

 今年2月に出たばかりのこの本、大学生向けの啓蒙書として書かれたと思われるのだが、現在の近現代史研究の現状と研究史を知るのに、これ以上はないといえる好著だ。司馬遼太郎の「竜馬がいく」と「坂の上の雲」で歴史を語ってしまうおじさんと歴史の教師必読の書といいたい。  近現代史は戦前からの蓄積がもちろんあるのだが、戦争の痛切な体験から近現代史…
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堤未果「政府は必ず嘘をつく」

 角川新書で今かなり売れてるらしい。堤未果の力量は「貧困大国アメリカ」で証明済みだが、この本はさらに刺激的だ。9・11以後と堤はいうが、私にいわせれば冷戦崩壊後にアメリカで進行しているネオコン(ネオリベ)支配下のアメリカの惨状、しかも世論がなだれをうって地獄に突進していく様が、描かれている。  刺激的というのは、アメリカで進行中の事態…
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「レミゼラブル」を読む

 誰でも知ってて全部読んだという人が少ない本というのがある。「聖書」なんてのもそうですね。小説では「レミゼラブル」がその中に入ります。荷車を持ち上げるジャン・バルジャン、実は私はこれしかイメージが湧かなくて、ストーリーもほとんど無知なままおめおめと生きてきてしまった。「巌窟王」とごっちゃになってるところもありそうだ。  そこで一念発起…
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「地図から消えた島々」長谷川亮一(吉川弘文館)

 イキマ島、グランパス島、中の鳥島といっても何のことやら。すべて今は実在しない日本列島から南にあった島の名だ。功名心だったり、投機ねらいだったり、動機は様々だが、一度は実在するとされて地図に記載されながら、やはりなかったことになって消えてしまった島がいくつもあったことを、この本で知った。中の鳥島にいたっては1960年まで存在したことにな…
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川本三郎『小説を、映画を、鉄道が走る』

 川本三郎の本はまずまず読む。あまり理屈っぽくない映画評論もいいし、散歩本も気楽、永井荷風と林芙美子への思い入れも悪くない、そしてこの本。昨年出た本(集英社)で、タイトルどおり、小説や映画に出てくる鉄道シーンについてのうんちくあり、追体験ありで、鉄道好きにはたまらないかもしれない。小説家では松本清張、映画では小津作品に川本は鉄道シーンと…
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