うなぎ 食の作られた伝統

 すでに旬が過ぎたかもしれない国民国家論が残した大きな遺産は「作られた伝統」という考え方だろう。要するにすべてを疑えということなのだけれど、由緒ある伝統があると語られるものの多くは近代国民国家の記憶の詐術が生み出したものだということになる。
 明日は土用ということでテレビはうなぎ特番が目白押しだ。今の日本人がうなぎ好きなのは間違いない。ではこれは伝統なのかというと、さすがに古代から日本では…とはいわないが、平賀源内が土用のうなぎを宣伝して以来なんぞと毎年のようにテレビは説明してくれる。そうか江戸時代からうなぎは日本人の好物だったのかと早とちりする人も出てくる。でも、自分史を振り返ってみると1年に3回以上うなぎを食べる生活をあなたはいつからやていたのだろうか。庶民であれば1980年代以降のことになるだろう。うなぎの伝統はたかだか30年なのだ。同様にまぐろを家庭で月に1回は食べるようになったのも1980年代だろうし、寿司も同じだ。
 1980年代頃から日本人はまぐろをうなぎをエビを(鯨はどうかな?)食い尽くす稀少生物資源の天敵となったのだ。うなぎに至っては世界の消費量の7割を日本人が食い散らかしている。はっきりいって、そんなにまでして食いたいか?
 1960年代の昔、私が小中学生だった頃、江戸川下流の葛西水郷ではうなぎ取りの漁師が水路を巡り歩いてうなぎを捕獲していたし、私の田舎ではちゃちな水路や池にうなぎは棲息していた。素人は捕まえようともしなかった。それが50年間で国内の天然物がほぼ絶滅し、物流と養殖技術の発展で外国産のうなぎを大量に輸入し、そしてうなぎはついに絶滅危惧種になってしまった。
 1960年以前生まれのおじさん、おばさんたちは考えてもいいんじゃないか。バブル以後の育ちだとうなぎやまぐろはあって当然安くて当然かもしれないが、あなたがたの子ども時代はうなぎもまぐろもえびも日常生活とは無縁だった。だったらもういいんじゃないのかね、そんなもの1年に1回食べられれば。鉄火丼が500円、鰻丼が700円で食べられると喜ぶのはもう終わりにしよう。
 近未来、うなぎ取引が世界中で禁止される時が来るかもしれない。なのにうなぎに執着する一部日本人がいるためにうなぎマフィアが暗躍し、うなぎ1匹が覚醒剤1グラムなみの値段で取引される、まさにうなぎ登りの時代になるかもしれない。

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この記事へのコメント

さとし君
2014年08月03日 14:26
作られた伝統 には自分の子供時代から中年にかけてのうなぎとの付き合いからみても納得です。自分が産まれた高冷地の河川にはうなぎはいませんでしたこともありますが。刺身は大祭の時のみ。親の世代の、毎日お祭りみたいなおかずの暮らしという話は耳に残ってます。
エビの冷凍ものが常時ありまして、明日のおかずが楽しみという感覚は今の子供にないでしょうね。
渡り鳥
2014年08月03日 21:18
疑ってかかれば、実は高度成長期に生まれた「伝統」が食生活のみならずあらゆる面でみられる気がします。高度成長以前をわずかに知っている者からみれば、「伝統?ちゃんちゃらおかしい」と言いたくなる時があります。

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