永井愛「鴎外の怪談」

 池袋の芸術劇場で二兎社公演、永井愛作演出の「鴎外の怪談」を見た。2005年の「歌わせたい男たち」以後ずっと永井愛の劇には足を運んできたのだけど、今回の「鴎外の怪談」という作品はタイトル名からも、ちらしの文面からも内容が想像できなかった。

 劇場はほぼ満席、年齢層は中高年が中心だろうか。鴎外の2番目の妻しげと姑峰のよく知られたいがみ合いを笑いの種にしていて、実際かなり笑えるようにできてはいるのだが、その一方で大逆事件の暗黒裁判が進行中という状況の中で、大きな時代の悪を前にして無力なままに悩み妥協しもだえる鴎外と彼を取りまく男たちの物語が進む。人間の自由が損なわれていくことに対する怒りと無力感、流されるままにすべてを受け入れあきらめてしまう日本社会への絶望。1910年という舞台をかりながら、永井愛がこだわっているのは2014年の日本だということがひしひしと伝わってくる。
 
 鴎外が大逆事件にどう関わり、どう生き抜いたのか、この劇で描かれるように解釈できるのか私にはわからない。ただいえるのは、永井愛の時代への危機感に満ちたメッセージの手段として鷗外が使われているわけではなく、明治末期の日本に生きていた知識人としての鴎外像をみごとに彫り上げた作品になっているのではないか。おすすめの作品である。

 それはさておき、鴎外は60歳で死んでいる。私はといえばその年齢をとっくに越えてしまった。 

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この記事へのコメント

2014年10月18日 19:01
 私も15日に観に行きました。このところ永井愛作品が少し物足りないことが多かったけど、今回は長さを感じさせない充実した舞台でした。確かにお薦めの作品です。

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